ウフィツィ美術館は、1982年に世界遺産フィレンツェ歴史地区の一部として認定されたルネサンス絵画が集まる美術館です。
ルネサンス期のフィレンツェの実質的な支配者メディチ家が、ボッティチェリ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロなどの多数の芸術家をパトロンとして支援したコレクションが展示されています。
なかでも第20室以降の天井画や、真珠貝の八角形が見事なトリブーナなど建築物も魅力的で、一度は見ておきたい場所です。
ウフィツィ美術館の建築について
ウフィツィ美術館は、初代トスカーナ大公コジモ1世の治世下、1560年にジョルジョ・ヴァザーリの設計で着工しました。美術館の建物は、ドーリア式の回廊の上に2階、3階部分が建設されたルネッサンス様式の建築物で、全体としては巨大なU字型をしています。基底部分は世界最初のコンクリート工法とも言われています。コジモ1世とヴァザーリは、ともに1574年に没しており、建物の完成は跡を継いだフランチェスコ1世と建築家ベルナルド・ブオンタレンティ(1536-1608)に引き継がれました。
中略
3階には美術品を飾る八角形の部屋トリブーナを増築させ、ベルナルド・ブオンタレンティがモザイクや真珠貝象嵌によって部屋の装飾を担当しました。その後、1591年から3階部分を公開したのが美術館の始まりで、これらは建築当初からコジモ1世の構想にあったといわれています。
引用:ウフィツィ美術館(Wikipedia)
▼関連記事
絵画『聖ラウレンティウスの生涯』天使のような修道士フラ・アンジェリコ
建築物が魅力!真珠貝の八角形が見事なトリブーナ
3階にある美術品を飾る八角形の部屋トリブーナの丸天井は、すべて同じ大きさの真珠貝象嵌で覆われていて特にきれいな建築物です。
メディチ家の財力が象徴されている部屋は、内部へ立ち入り禁止で、2ヶ所から部屋の内部を鑑賞できます。
ウフィツィ美術館がフィレンツェ政庁として利用されていたころから、メディチ家が所有する美術品を展示する部屋として利用されていました。
この部屋を美術品鑑賞のために公開されたのがウフィツィ美術館の始まりです。
▼関連記事
春を鮮やかに描いた『プリマヴェーラ』
サンドロ・ボッティチェッリの有名な絵画『ヴィーナスの誕生』と対幅で描かれたといわれているのが『プリマヴェーラ』。
1482年頃に描いた絵画は、日本では『春』とも呼ばれています。
203cm×314cmの木板にテンペラで描かれた板絵で、世界でもっとも有名な絵画作品の一つです。
6人の女性と2人の男性が描かれ、画面最上部には弓矢を番えるキューピッドが描かれています。
画面全体の中央に描かれているのが愛と美の女神ヴィーナス、画面一番右に青く描かれているのが西風の神様ゼフィロス、ゼフィロスが追っている女性は妖精クロリス、二人が結婚し、ゼフィロスがクロリスに花を咲かせる力を与えました。
クロリスの口から花が出ていて、手をあてた前に描かれている女性が変身した花の女神フローラです。
ヴィーナスの左側に描かれているのが、美と優雅さを司る三姉妹の三美神です。
アグライア(典雅・優美)、エウプロシューネ(喜び)、タレイア(花盛り・繁栄)は手を取り合って踊っているようにみえます。
真ん中のエウプロシューネの視線の先には、左側に描かれた神々の使者マーキュリーが描かれています。
マーキュリーは神々の世界と人間の世界を取り持つ存在で、カデュケウスと呼ばれる杖を使い暗雲を追い払っています。
エウプロシューネとマーキュリーが恋に落ちる瞬間が描かれているので、ヴィーナスの上にいるキューピッドがエウプロシューネへ矢を放とうとしています。
キューピッドの目隠しは、恋は盲目という意味です。
ボッティチェッリの絵画はストーリーを読むと楽しめるので本を買って内容を理解するのも良いですね。
左側には、西風の神様ゼフィロスと、妻である花の女神フローラが描かれ、息を吹きかけてヴィーナスを岸まで運んでいます。
岸には季節の女神ホーラが、ヴィーナスにショールをかけようとしています。
ホーラはヴィーナスの付き人で、ドレスには青いヤグルマギクが描かれています。
首元のギンバイカの葉は、結婚における忠誠と変わらぬ愛を意味し、ヴィーナスの花ともいわれています。
『ヴィーナスの誕生』の構図は、左上の西風の神様ゼフィロスと妻である花の女神フローラから、右側の季節の女神ホーラへ斜め下へ向いています。
また左下に描かれているガマは“再生”、帆立貝は“生殖”、オリーブの木は“平和”を意味し、ホーラの足元のアネモネは“はかなさ”、オリーブの木は“平和”を意味する植物です。
ボッティチェッリの絵画は華やかな装飾がとてもきれいです。
額縁の細工が美しい円形絵『聖家族』
『聖家族』は油彩とテンペラで描かれたパネル絵で、現存しているわずか3点の1つで唯一完成している作品になります。
トスカーナの有力な家庭の娘マッダレーナ・ストロッツィとの結婚を記念して、夫であるフィレンツェの商人アニョロ・ドーニの依頼で描かれた作品とされています。
円形の絵はフィレンツェの伝統的な絵画スタイルでお祝いなどで絵をかいたお盆を送る風習がありました。
絵の中央にはグレーの道のような線が描かれています。
手前に描かれているのが聖母マリア、幼子イエス、父ヨセフの聖家族です。
グレーの線の奥には裸の異教徒の人物が描かれています。
額縁はミケランジェロがデザインをし、金細工師に彫らせた見事な細工です。
この縁にはキリスト旧誓約書に登場する預言者2人、巫女の2人の5人の頭部が絵を見つめるように彫られています。
現在も絵画と額縁はウフィツィ美術館に貯蔵されているので、しっかり見ておきたい作品です。
フィレンツェの伝統的な円形の絵はお祝いなどで送る風習でした。
同じくヨーロッパでは、キリスト誕生のお祝いの日にクリスマスにご馳走を盛ったお皿を使用後に、その家に務めるスタッフ1人1人に与え、貰ったスタッフは毎年クリスマスを記念してプレートを壁にかけて飾るようになりました。
一年を記念したイヤープレートのコレクションは日本でもデンマーク初の磁器、コバルトブルーが美しいロイヤルコペンハーゲンの絵皿を飾ったり記念の年のお皿を送ったり親しまれています。
ウフィツィ美術館入場料
ウフィツィ美術館は、大勢の人が観に来るので事前にチケットを予約しておきましょう。
イタリア語で“オフィス”を意味するウフィツィ美術館、ルネサンス美術の名画がたくさん展示されているので、自分の見たい絵画を前もってしぼって見ることをおすすめします。
レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ボッティチェッリ、ラファエロなどの展示作品は2500点にのぼり全て鑑賞するには2日はかかってしまいます。
入場について
ウフィツィ美術館はコの字型をした建物で入口は2つあります。
チケットを事前に予約したら3番窓口で受け取る必要があります。
1 予約者専用の入口
2 予約なし・当日券購入者の入口
3 チケット予約者の受け取り窓口
開館時間
火曜~日曜 8:15~18:50(最終入場は18:35まで)
入場料
3月1日~10月31日 | 11月1日~2月28日 | |
現地購入 | 20ユーロ | 12ユーロ |
ネット予約 | 24ユーロ | 16ユーロ |
・毎月第一日曜は、無料で入場です
・子供(18歳以下)は入場無料です
写真・ビデオ撮影は許可されていますがフラッシュ撮影は禁止です。
館内での飲食、携帯での通話、大きな荷物(傘も含む)の持ち込み、作品に触れることは禁止です。
美術館から眺めるヴェッキオ橋
美術館からは、アルノ川に架かる歴史的建造物ポンテ・ヴェッキオ(ヴェッキオ橋)も見ることができます。
フィレンツェ最古の橋であり、河川の氾濫などで何度か建て直されており、現在の橋は1345年に再建されたものです。
橋の上には宝飾店が建ち並んでいることで知られています。
プッチーニのオペラ『ジャンニ・スキッキ』のラウレッタが
“「お父さん、もしリヌッチョと結婚できないなら、私、ポンテ・ヴェッキオからアルノ川に身投げしてしまうから」”
というセリフで有名な橋です。
フィレンツェで有名絵画が集まるウフィツィ美術館ははずせない場所です。
フィレンツェのシンボルであるサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂と一緒に観て歩きたい場所です。
ウフィツィ美術館は、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂と同じく、日本で2001年に公開された映画『冷静と情熱のあいだ』のロケ地にもなっています。彫刻がならぶ素敵な廊下は映画でも使用されています。
フィレンツェを充分満喫できる美術館でもあるので、絵画や彫刻が好きな人も建築物が好きな人にもおすすめなのでイタリアを満喫してください。
▼関連記事
201段の階段をのぼる!世界最大級ゴシック建築ミラノのドゥオーモ
ウフィツィ美術館(Galleria degli Uffizi)
zip: Piazzale degli Uffizi, 6, 50122 Firenze– Italy
https://www.uffizi.it