テンペスタ(La Tempesta)は、ルネサンス期の巨匠ジョルジョーネが、1506年から1508年ごろに描いた83cm×73cmの油彩画です。
テンペスタについては、X線による解析などで多くの解説があります。
テンペスタという題名の由来にもなった近づく嵐を、空気遠近法で自然の四元素を描いているといわれますが、人間の五感を表しているとも解釈できます。
現在は、イタリアフィレンツェのアカデミア美術館に貯蔵されています。
ジョルジョーネについて
ジョルジョーネ(Giorgione、1477年/1478年頃 – 1510年)は、盛期ルネサンスのヴェネツィアで活動したイタリア人画家です。
確実にジョルジョーネの絵画であると見なされている作品は、わずかに6点しか現存していないともいわれています。
人物像と作品の記録がほとんど残っていないので、西洋絵画の歴史のなかでも謎に満ちた画家の一人です。
ジョルジョーネは、ヴェネツィアから40kmほど内陸部にあるカステルフランコ・ヴェーネト出身といわれており、ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(Tiziano Vecellio)と深い関わりがあります。
『画家・彫刻家・建築家列伝』には、ジョルジョーネはティツィアーノの師だったという記述がありますが、ジョヴァンニ・ベッリーニ(Giovanni Bellini)のもとで修行していた兄弟弟子であるとされています。
ジョルジョーネは、祭壇画や肖像画にも新境地をもたらし、宗教的、古典的な意味も作品に持たせず、叙情的で空想的な表現と色彩で描き、天与の才能で同時期の芸術家たちに圧倒的な影響を与えます。
ジョルジョーネは腺ペストに感染し、1510年10月に死去したといういわれがあります。
その日付は、イザベラ・デステがヴェネツィアの男友達に送った「ジョルジョーネの絵画を購入して欲しい」という内容の書簡の記載で、この書簡にはすでにジョルジョーネが死去していることも書かれていました。
そして一ヵ月後にデステに送られた返信には、ジョルジョーネの作品はいくらお金を積んでも入手できなかったことが記載されていました。
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五感を表したような『テンペスタ』
画面右には乳児に母乳を与える座った女性が描かれている。ジプシーの女、あるいは売春婦ではないかという説もある。座った母親が母乳を与えるときには膝の上に乳児を乗せるのが普通だが、この絵画では母親右側の地面に乳児が座らされているため、母親の半裸身があらわになっている。これは母親の役割は神聖なものというよりも、ごく日常的なものであるということを示唆している。
中略
人物像の背後に描かれている風景は絵画の単なる背景にとどまらず、最初期の風景画ともいえるもので、このジャンルの絵画の発展に大きく寄与した重要なものである。この絵画に表現された「静謐な」雰囲気は現在でも観る者を魅了し続けている。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/テンペスタ
人間の五感を表した自然の四元素か?
テンペスタは、大地、水、大気、火という自然の四元素を、視覚、穏やかな印象の雷を聴覚、触覚、味覚、嗅覚という、人間の五感を表しているのではないかという解釈もあります。
その場合、火が光として雷を表し聴覚、嗅覚をバラで表現しているとします。
ジョルジョーネのテンペスタについては、X線による解析で、下絵を描かずにカンヴァスに直接絵を描くことがわかりました。
普通は人物を書いた場合は、人物についてのタイトルになることが多いですが、テンペスタという嵐を緑と青で表現し、詩的な落ち着いた雰囲気を全体に表現しています。
線遠近法ではなく、空気遠近法によって奥深くしっとりとした感じに描いていることが印象的。
マルカントニオ・ミキエルは、1530年にテンペスタを『嵐とジプシーと女と兵士を描いた小さな風景』と記しています。
人物を対象というものではなく、自然の中に人物を描いたという表現がしっくりきます。
青と緑をつかった独特の風景画は、日本画家東山魁夷の作品に共通するものがあります。
単色で表現し静謐な雰囲気をだしているので、観た人は穏やかな感情になり、詩的な表現で自分でいろいろな感情を絵画を観て感じます。
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ミケランジェロの迫力あるダビデ像
イタリアフィレンツェのアカデミア美術に展示されている『テンペスタ』と一緒に観ておきたい作品は、ミケランジェロが1501年から制作した彫刻作品、517cm×199cmの迫力のあるダビデ像です。
ダビデは旧約聖書で、イスラエル王国の二代目の統治者のことです。
ルネサンスならではの特徴として、瞳がハート型に象られていることや、イスラエルの民の証とされる割礼の痕がないことが挙げられます。
ダビデ像は石膏のようにみえますが、実は巨大な大理石を彫った彫刻です。
アカデミア美術館は建物もとても美しいので、いろいろ観て歩く楽しみがたくさんあります。
1800年代の大広間は、1784年にトスカーナ公レオポルト2世が、サン・マッテオ病院を改築して造った展示スペース。
この広間には大理石彫刻を制作するうえで元の型となる石膏模型が部屋いっぱい。
芸術都フィレンツェらしく、美大生のためにたくさんの展示物をおいているなんて素敵ですよね。
アカデミア美術館の入場チケット
アカデミア美術館は小さい美術館ですが、ダヴィデ像で人気があるので混雑時にはチケット購入までに1時間以上並ぶことがあるので事前予約をおすすめします。
アカデミア美術館の入場チケットは、2つの選び方があります。
1 通常チケット 8+4€
2 フィレンツェ・カード(Frinzecard) 85€
アカデミア美術館は、ドゥオモやウフィッツィ美術館をまわる時間を決めてから予約する方がベスト。
たくさん素敵な作品があるので、事前にしっかり観ておきたい作品を選んでおき、たっぷり時間をとって鑑賞することがおすすめです。
フィレンツェにもたくさん美術館がありますが、アカデミア美術館ははずせない美術館のひとつ。
絵画や彫刻を楽しみたい人におすすめの美術館です。
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人間の視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感を描いたのではないかという、ルネサンス期の巨匠ジョルジョーネの『テンペスタ』をご紹介しました。
五感は風水ともつながりがあります。
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